本稿は、1896年、釜山に居留した日本人によって製作された韓國語學習書『實地應用 朝鮮語獨學書』の具體的な內容を學界に紹介し、語學史と言語史の立場から本書の持つ意味を考えてみようとしたものである。調査の結果、本書は、同時期の韓國語學習書の中で、特に『日韓通話』(1893)と『日韓會話』(1894)の本文構成を參考にして作られたものであることが確認できた。また、本書の日本語は、語彙面においては一部地域性と關わる言葉が散見されるものの、文法面においては形容詞のク活用と5段動詞の音便活用が一般化されており、全體的に近代東京語の言語現實を反映しているように思われる。一部特定の二段動詞の己然形やハ行四段動詞の連用形に古い形の活用形が見受けられるが、これは當時の韓國語學習書に廣く見られる現象であり、近代日本語の過渡期的な言語現實を反映したものと判斷したい。なお、本書に收錄されている韓國語は、近代韓國語の語彙史的な側面から興味深い資料的情報を提供し得るものであることが確認できた。このような特徵を持つ『實地應用 朝鮮語獨學書』は、韓國と日本の語學史的な立場から今後樣樣な問題を提起し得る資料として活用出來るものと思われる。