本稿は、1894年、日本の參謀本部によって製作された韓國語學習書『日韓會話』の具體的な內容を學界に紹介し、語學史の立場から本書の持つ意味を考えてみようとしたものである。この『日韓會話』が發行された1894年8月の時点は、日淸戰爭が勃發し一月も經たない時期であり、本書の存在は、語學史的な觀点だけでなく、近代史においても參謀本部が果たした役割を考える上で示唆する所が少なくないように思われる。調査の結果、本書は、1894年の前半期に釜山地域で日本人と韓國人が本文を作成し、これを參謀本部が、同年8月、東京で刊行したものと推定した。また、本書の日本語は、當時の口頭語が强く反映されているのにも關わらず、二段動詞の已然形やハ行四段動詞の連用形などには古い形の活用形も見受けられ、注目される。このような現象は近代日本語の過渡期的な言語現實を反映したものと判斷したい。なお、本書に收錄されている韓國語は、韓國語の語彙史的な側面から貴重な資料的情報を提供し得るものであることが確認できた。このような特徵を持つ『日韓會話』は、韓國と日本の語學史的な立場から今後樣樣な問題を提起し得る資料として活用出來るものと思われる。