本稿の狙いは、日本近代化に對する客觀的な評價の視野を立てるための試論として、日本近代化をめぐる論爭的な課題のなかでもっとも重要な爭點になっているいくつかの主題を對象として、その硏究史的な流れを批判的に檢討し、今後の硏究力向を展望するところにある。 從來の日本近代化の問題は、主に西洋近代との比較と日本的特殊性の視点から議論されて來た嫌いがある。これは日本近代化を否定的に評價するマルクス主義歷史學近においても共通的な命題であった。さらに問題は、最近の歷史修正主義の動向からも分かるように、日本近代化を肯定的に評價する立場から、その`特殊性`を强調する主張が絶え間なく續いているところにある。 日本近代化の前提が江戶時代から用意されていたということはいまだに有效性を持っているように見えるけれども、これに對してはこれかわもっと緻密で批判的な硏究が必要であろう。また、明治維新をめぐる評價の如何も旣存の通念に對する認識の轉換とともに比較史、比較文化史などのように新しい硏究方法論の導入による客觀的な分析が要求されている。 我??は、これらの硏究を通じて、日本近代化も世界史的な同時代性のなかで進行された物であり、アジアの近代化という視点からみる時、決して特殊ではないということを立證できるだろう。日本が非西洋諸國のなかでいち早く近代化を達成したことは事實であるが、その內實をみると、依然として前近代的な要素が殘存しており、このような前近代的な要素が他のアジア諸國との間で共通點を持つ側面も少なくないのである。 このように見る時、日本の近代化は西歐列强の壓力のもとで天皇制イデオロギ-を中心として國家の主導による急速な近代化を展開したところにその特徵があるといえる。そして、その特異性は世界史的な同時代性のなかで現れ近代國民國家の類型上の問題として捉えるぺきである。また、今日の日本の右傾化の動向から見る時、日本近代化に對する`特殊性`の强調が政治イデオロギ-と結合する恐れがあるという点についても十分な注意が必要であろう。