日本語版ワンピース巻一には、407種類のオノマトペが617回にかけて登場する。オノマトペが絵の内容を補助的に説明する視覚的な機能を担当したり、また音を示すことによって聴覚的な機能を受け持っている。オノマトペを使うことによって、絵の面でも、文の面でも単純化した漫画という媒体の限界を補っていると思われる。合計617例は、効果音で386例、セリフで231例が使用された。セリフといっても文の中で使われたのは8例に過ぎず、残りは単独発話である。また617例は、擬音語が353例、擬態語が212例、兼用のものが52例で、擬音語のほうが1.6倍多い。漫画は視覚的媒体なので擬音語の使用は十分予想できるが、擬態語も多数用いられていることは、オノマトペの絵の特徴、つまり単純化した絵を補って具体的な模様と状態の描写する役割をしているためであろう。407種類のオノマトペを形態的に分類した結果、103種類の多様な類型にまとめられた。この結果からは臨時的な類型を用いることによって、現実音を反映したい意図が見られる。また用例を音声学的音節の数によって分類すると、1音節から14音節まで多様な音節数のオノマトペが使用されていることが分かる。これは繰り返しによって音節数が長く実現されたためであり、慣習的なオノマトペよりこの漫画だけの臨時的なオノマトペが多数使用されていることを示すものである。韓国語翻訳本との比較では、577例は訳語が確認されたが、40例は訳語が見られない。空のスペースのままのものが34例で、ほかの文字を大きくして該当位置を目立たないようにしたのが6例である。訳語が存在する577例のうち、訳語がオノマトペではないものも10例あった。これらは品詞の異なる一般語彙を用いている。その他、擬音語が擬態語に訳されたり、その逆のものもある。それから一つの日本語オノマトペが、韓国語版では何種類のオノマトペに訳されたものもあって注目される。これは日本語に比べ韓国語は音節数が多いため、バリエーションに富むオノマトペ表現ができるからではないかと考えられる。