一般的に日本語の文末には用言の語彙的な意味に付加して[[[[[voice] aspect] 肯否]tense]modality]のような文法カテゴリーが層状構造を持って統合的(syntagmatic)、又は系列的(paradigmatic)な関係を含んで展開される。文は表現者の視点·立場によって多様の表現形式が存在する。事態に対する認識と叙述の立場とも言える視点(Focal point)の問題は人称、指示語などのような直示(deixis)を含め、用言複合体である述語部分の全般に渡って具現される。
視点には直示の原点(origo)を基準として移転された視座(viewpoint)から注視点(対象)を見る視線の方向が有する。これをvectorとすれば、表現者の表現意図が内向的の場合は求心性(←)、外向的であれば遠心性(→)の方向性として区分される。
話者の主観的な判断を表す日本語助動詞の整然たる接続順序と傾向は渡辺実(1971)、北原保雄(1981)、仁田義雄(1989)らによって形態論·統語論·意味論的な研究はほぼ糾明されたが、いまだ視点論的な方法による承接原理の究明までには及んでいない。
こんな現状を踏まえて本考察ではvectorを利用して、複雑に展開される日本語の述語、特に助動詞の承接原理を考察してみた。
考察の結果、詞的性質の「(さ)せる:使役→」+「(ら)れる:受身←」+「たい:希望→」に相互入れ替わる中立性質の「そうだ:様態←·ない:否定→·らしい:推量←」が接続し、命題表現の境界線に位置する「た」の後ろに辞的性質の「対事的modality←」と「対人的modality→」が分枝された。
特記すべきことは、助動詞の承接順序には遠心性と求心性のvectorが相互交代して出現することであった。これは相互に入れ替われる中立性質の助動詞「そうだ·らしい」が否定の「ない」と過去または完了の「た」の前後に接続する原理の解釈にも適用される。
結局、日本語の助動詞の相互承接はvectorの均衡を維持して調和たらしめるために一定の秩序を持って展開されることが分かった。究極的には助動詞の承接は事態に対する客観的な表現の遠心性から話者の判断と態度の主観的な表現を担う求心性に還元される方向へ作用していくのである。