本研究は「怒り」を表す慣用句を対象に、アンケート調査を実施することにより、慣用句の使用頻度を中国語と対照しながら分析したものである。アンケートから得たデータに基づき、理解と使用、年代差、地域差という三つの角度から分析した結果、次の三点が明らかになった。
1. 中国語より日本語の「理解慣用句」や「使用慣用句」の割合が低く、あまり周知されていない慣用句の割合が高い。
2. 日本語の場合、年齢の高い世代ほど使用頻度が高いという傾向が見られ、中国語ではそのような年代差は見られない。
3. 中国語では地域により使用頻度に差のある慣用句が存在する。一方、日本語の場合、著しい地域差は今回対象とした慣用句の調査には表れていない。これらの相違点が生じる原因は両言語における慣用句の生まれた背景と深く関わると思われる。