二代目岳亭が著した合巻八作は殆どが未翻刻·未紹介の作品であり、よって書誌学的研究を行った結果、作品の成立関係や作者について次のような新知見が得られた。『伊賀越誉仇討』には丁付が乱れる改竄後印本が存すること、『桜荘子後日物語』には相違する二種があって初印本と後摺本の関係にあることや、本作に関連する歌舞伎·正本写合巻·合巻の成立関係及び各々の作者の関係について、そして合綴した改題改編本の存在について指摘することができた。また、『緑柳五ヶ国草紙』は全四編ものであるが、編毎に異なる所蔵先のゆえに錯綜している早印本や後印本の判別、完本や欠本の区別、異なる作者による異国物合巻三種の比較分析を行った。岳亭作<膝栗毛もの合巻>四種、『横濱栗毛』『滑稽/江戸久居計』『東海道中栗毛弥次馬』『弥次郎喜太八東海道中旅日記』についても後印本作製方法等書誌学的検証の結果知り得た事項を中心に予約報告した。猶、『桜荘子後日物語』や『東海道中栗毛弥次馬』が魯文関連作品の抄録、あるいは踏襲に過ぎないという先行意見に対して、前者は刊行年の面で、後者は作品内容の面で異見を唱えた次第である。