本研究では、自然なコミュニケーションを行なう際に頻繁に出現する「言い淀み」現象について日本語と韓国語の類似点と相違点を探る。
具体的には、日本語と韓国語の母語話者が日本語や韓国語を用いて同一文化内または異文化間で行なった3種類のコミュニケーション、つまり、グループディスカッション、1対1の対話、電話会話を談話資料として用いて「言い淀み」という談話マーカーの「生起位置」と「音節数」に注目し、日韓対照を試みる。
第一に、言い淀みの生起位置については、同一文化内·異文化間、使用言語、母語の違いを問わず、日韓両言語共に、「文中」が最も多いことが明らかになった。そしてそれに次ぐのは「文頭」で「文末」が最も少ない。この結果から言い淀みの生起位置については、同一文化·異文化、使用言語、母語による違いは、ほとんどないことが分かった。
第二に、言い淀みの音節数に関しては、「1音節」が多いことが日韓両言語に共通している。それに加えて、日本語における談話では「2音節」も多い。「3音節」以上については、数が少なく、あまり見あたらなかった。一方、韓国語による発話、つまり、同一文化内で韓国人が母語話者同士で話した場合、異文化間で韓国人が韓国語で話した場合、異文化間で日本人が韓国語で話した場合については、「ku(その)類」と「um(うん)」といった「1音節」の言い淀みが多く見られた。