本稿は日本によって植民地の朝鮮に敷かれた鉄道が、‘植民地朝鮮’を作り上げるためにどのような役割をしたのかを、朝鮮総督府編纂 『國語讀本』を通じて糾明したものである。
朝鮮の近代文明の形成過程で鉄道が大きな役割を果たしたのは言うまでもない。しかしながら、それは日本によって敷設された植民地鉄道であったことからも、朝鮮の植民地化を促す装置として、支配国の植民地の経営のための道具として働掛けたのであった。
日本の標準時システムを定着させることで時間を支配し、‘汽車の中’という空間で、自由と平等の原理を具現することで均質な植民地人を育成しようとし、ただ目的地を向いて前進または進歩のみを追求する鉄道の通俗的な秩序を通じて、過去への回歸が不可能であることを認識させるのに用いられた。
朝鮮総督府は植民地期、小学校の日本語の教科書の『國語讀本』による日本語の授業を通じて、これら鉄道の秩序を植民地の朝鮮人に間断なく洗脳させ、‘文明’を前面に押しつつ、支配国のシステムに‘同化’させるため、朝鮮の兒童に‘文明国の日本へ同化’に導かせたのであった。それはもとより出発から植民性を保っていた鉄道より派生された時空間であったこそ、‘文明’と‘同化’を目指して拡張して行く日本帝国の有効適切な時空間になったのではないかと思われる。