『スキャンダル』は、カトリック作家としてよく知られている遠藤周作が、62才に至って發表した作品である。65才のカトリック作家の勝呂が登場するこのテキストは、人間の生の中で疎外と排除の領域である老年に注目している。老年の危機感と限界を切實に認識することで、老年についての關心を呼び起こしているにもかかわらず、從來の硏究ではその点が見過ごされてきた。『スキャンダル』での老年の聲は、現實世界に介入して、自分の生を積極的に意義づける。これまで退行に思われ、役に立たない實存として格下げされていた老年に意味のある價値を與えることで、慣例的な老年への認識を引っくり返す。
高齡化という、現在の時代的な課題に適切に對應するためには、具體的な生の現場からの「生きている」老年の意味を十分にとらえる作業が何よりも至急を要する。老年についての省察が求められている現在的な視点で老年の問題は、續いて關心と探求の對象にならなければならない課題である。