『朝鮮語學獨案內』は、明治27年(1894年)に松岡馨によって作成された韓國語學習書である。目次をみると、「諺文」「單語」「助辭」「會話」で構成されていることがわかる。ここでは、まず「單語」の部門配列をする際に參考にした資料を明らかにしようとした。先行硏究にある、「『交隣須知』の部門配列を基に再構成した可能性が高い」という論を再檢討したのである。その結果、『朝鮮語學獨案內』の「單語」の部門配列は、『交隣須知』のような資料をみていた可能性も否定できないが、『日韓會話』等の部門と共通している部門名が多いこと、冒頭に數に關する單語を配置していること等を理由に、『交隣須知』よりもう少し新しい韓國語學習書で、當時同じような目的で作成された韓國語學習書を參考にした可能性が高いのではないかという結論に達した。また、『朝鮮語學獨案內』の日本語の特徵として、明治期の『交隣須知』諸本等に殆んどみることができない、人稱代名詞の「僕」や終助詞「さ」の用例がみられる点や、先行硏究で指摘されている、原因·理由を表わす「ので」がみられる点、2段動詞が全て1段化していること、ハ行5段動詞の音便が全て促音便であること等によって、言語資料としての價値が高いという結論を得た。