本稿では近松の11篇の心中物の中で妻子のある作品を選んで、金が心中の直接的な動機になった作品を中心に考えてみた。それで『心中重井筒』之『心中天網島』を中心にして各作品の特徵之登場人物の性格を通じて心中の原因を考察してみた。『心中重井筒』の場合は作品の完成度之してあまり高い評家を得ていないが、卽存の心中物に比べて妻子のある男の三角關系、敵役の不在、複雜な構造、この三つが新しい試みであった。德兵衛の擬制的な親子關系による反家意識、舅之養子之の葛藤が遊女お房之心中するのに重要なキ一になる。結局『心中重井筒』は愛人お房を救うための金の調達ができなかったこ之に二人は心中に赴くこ之になる。壹方『心中天網島』では治兵衛のような中小釘人の場合は愛している遊女を身請けする金がない之いう遵になったら、壹分が廢って當時大阪では商賣するこ之ができなくなる。近松は『心中天網島』を通じておさん·治兵衛·小春之いう三人の人間的な對立葛藤の矛盾之、金の矛盾を同時に設定する。その中でも金の問題はこの作品の壹番重要な條件であり、心中の直接的な動機でもある。