「和韓拾遺」の諾本は、1764年寶曆使行の歸路の大坂で起きた崔天宗殺害事件をテ―マとして作られた實錄で、全體的に「寶曆物語」と內容と構成が似ている體制になっている。旣存の先行硏究にしばしば引用される「寶曆物語」は、「和韓拾遺」の諸本の內容をほとんど含んでいて文脈も自然であるが、これとは異なり日本東京都立中央圖書館<特別買上文庫3908>は、ほかの實錄に共通して登場する崔天宗が對馬に着いて見た"都訓導の奇夢之事"や、或いは"信使歸坂、幷、四月七日夜珍事"という主題として紹介している"鈴木傳藏が崔天宗の部屋まで忍び입む話"などが見えず、文脈の不自然なところが多い實錄である。つまり日本東京都立中央圖書館藏<特別買上文庫3908>は、殘りの三つの實錄とは系列が異なる寫本の可能性がある。