11ヶ月以上使行を導いた正使の趙엄は通常の通信使より多くの事件と事故に卷き입まれた。特に1764年4月7日、大坂西本願寺で對馬の通詞により起こされた崔天宗殺害事件は、日本でも大騷ぎになるほどの大事件であった。崔天宗殺害事件はその後、歌舞伎と淨瑠璃はもちろん、實錄の形で數多く作られるようになった。韓國國立中央圖書館所藏の『朝鮮人難波之夢』もその中の一つである。『朝鮮人難波之夢』と『寶曆物語』は皆、"夢"を通じて神佛の啓示を受けて大坂で發生する崔天宗殺害事件を暗示するが、『寶曆物語』は崔天宗が善人として登場して夢を見る一方『朝鮮人難波之夢』は鈴木傳藏が善人に變身して夢を見る存在として登場する。更に、『朝鮮人難波之夢』と『寶曆物語』において崔天宗の地位を上上官に記述しているのは、實錄で殺される人物を朝鮮の高官として設定して讀者の興味をより一層、誘發するためであり、實際に起った大坂の殺害事件をもう少し浮上させるための裝置であったと見ることができる。